身体知研究会

身体技能を言語化する方法論の確立

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設立の目的と研究課題

設立の目的

 知能を脳内の演算としてではなく,身体と環境との相互作用から解明しようとする試みは人工知能研究の初期段階から存在した.ロボティックスはその一例である.しかし,知能の発現と運用において身体がどのような役割を果たしているのかは未だ明らかではない.

 我々は人間の動作に着目し,巧みな動作を可能にしている能力を身体知と定義する.優れた楽器演奏や歌唱,スポーツ,ダンス,複雑機器の操縦,医療手術などは身体知が働いている例である.本会は,これら人間の巧みな動作を調べることにより身体知を解明することを目的とする.

研究課題

 身体知の研究はこれまで様々な分野で個別に進められてきた.人工知能では身体知の自動獲得,スポーツ科学では生体計測とコーチング,認知科学ではスキル学習とメタ認知,ロボット工学ではスキルの再現,脳科学ではスキルを実現するメカニズムなどが研究されている.

 本会では,人間が身体知を獲得する過程を理解するとともに,スキル獲得を促進する環境のデザイン方法論を探求する.研究対象となるスキルには,安定環境下での特定タスクだけではなく,動的に変化する環境に適応するスキルも含まれる.

 これらの目的を達成するためには,以下に示すさまざまな研究を行う必要がある.動作を生み出す神経システムや筋骨格システム,動作のバイオメカニカルなモデルの作成,熟練者の動きからスキル抽出するためのデータマイニング,動作の質を評価する方法論,スキル獲得の認知モデルの作成,認知科学的観点からの教育方法論の探求などである.スキルサイエンスの成果は,人間のように柔軟で熟練した動きの実現を目指すロボティクス研究にも有用な知見を与えるだろう.

 なお本研究会と隣接する会として「知識・技術・技能の伝承支援研究会(SIG-KST)」があるが,我々は技能を科学的に解明することに関心があり,応用に重点をおくSIG-KSTとは方向性が異なる.また本研究会はアートとの接点も探っており,この点でも産業応用を志向するSIG-KSTと異なる.